SAMUEL ZELIG
ロサンゼルスを拠点に展開する、SAMUEL ZELIG(サミュエル ゼリグ)。
アメリカのワークウェアやユニフォームを背景に、オリジナルのアートワークや刺繍、独自の染色や加工を重ねながら服をつくるブランドです。
一見すると、まず目に入るのは服の上に広がる数々の刺繍。
ただ、SAMUEL ZELIGのおもしろさは、その装飾だけではありません。

SAMUEL ZELIGについて
SAMUEL ZELIGがベースとしているのは、古くから存在するアメリカのワークウェアやユニフォーム。
そこにフランスや日本の要素や素材、現代的なフィッティング、独自の染色やウォッシュ加工を取り入れながら、クラシックな服が本来持っていた魅力を残し、現代の服として再構築しています。
生地や縫製、金具、染色や加工といった細かな部分まで考えながら、まず一着の服そのものをつくる。
そしてその上に重ねられるのが、ブランドの大きな特徴でもあるオリジナルのアートワークです。

Jonathan Levite と Melissa Marsella
現在SAMUEL ZELIGを手掛けるのは、Jonathan LeviteとMelissa Marsella。
二人に共通しているのは、服だけでなく、幼い頃から絵を描くことにも強く惹かれてきたことです。
Jonathanは幼い頃からペイントやドローイングに夢中になり、中学生になる頃から、自分が着る服の細かなディテールにも目を向けるようになりました。
Melissaもまた、幼い頃から服と絵の両方に興味を持ち、人がどんな服を着ているのか、その人の個性やスタイルを見ることが好きだったと話しています。
大学卒業後、Jonathanは小規模なメンズウェアブランドに参加。
服をデザインすることだけでなく、生産からブランド運営まで、小さなチームでものづくりを続けていくための仕事を実践的に経験していきます。
一方のMelissaは、Ralph Laurenが展開するRRLのデザインチームへ。
RRLは、ヴィンテージのアメリカンワークウェアやミリタリー、ウエスタンなどを背景に、素材や加工、細かなディテールまで作り込むことで知られるラインです。
それぞれ異なる場所で経験を積んだ後、MelissaがSAMUEL ZELIGに加わり、Jonathanとともに現在のブランドをつくっています。
こうした二人の背景を知ると、SAMUEL ZELIGがヴィンテージを単なる見た目として扱っていないことも、少し理解しやすくなります。

服の上に、ひとつの物語をつくる
SAMUEL ZELIGの服づくりでは、まずベースとなる服そのものをしっかりとつくることが大切にされています。
古い服の形だけを見るのではなく、生地や縫製、シルエット、金具、染色、そして着込んだ先に生まれる表情まで考える。
その上で、もうひとつ重要になるのが「物語」です。
古いワークウェアやスポーツウェア、フォークアート、写真、印刷物、日用品など、さまざまなものをリサーチしながら、シーズンごとにひとつの世界を組み立てていきます。
そこから着想を得て、JonathanとMelissa自身が新しいアートワークを描く。
そして刺繍やプリント、加工を使い、それらを服の上へと落とし込んでいきます。
過去に存在したものを、そのまま再現するわけではありません。
まるで、どこかに本当に存在していたヴィンテージのようでありながら、実際にはどこにも存在していなかったもの。
服の構造、生地、加工、そしてアートワーク。
そのすべてをひとつのプロダクトとして掘り下げていくことが、SAMUEL ZELIGのものづくりにつながっています。

Why Samuel Zelig at koto
kotoでは、日常の中で自然に身につけられるものをベースに、その人なりの着方や解釈が生まれるようなセレクトを大切にしています。
完成されたひとつのスタイルを提案するというより、その中に少しの違和感や意外性が入り込む余白を残しておきたい。
SAMUEL ZELIGは、そんな余白に自然と入ってきたブランドでした。
最初はロサンゼルスを背景に持つブランドという認識で見ていましたが、実際にプロダクトに触れてみると、いわゆるアメリカンカルチャーだけでは括れない感覚がありました。
ヴィンテージやワークウェアを深く掘り下げながら、服の佇まいや色、刺繍として表現されるアートワークには、また少し違った文化の空気も混ざっている。
そして何より惹かれたのは、一着の「物」としての存在感でした。
ヴィンテージの表面的な要素を引用するのではなく、その背景にあるものまで掘り下げ、生地や加工、刺繍、グラフィックを通して、ひとつのプロダクトとしてつくり上げていく。
そのものづくりへの向き合い方にも魅力を感じました。
SAMUEL ZELIGは、毎日身につけるためのベーシックとは少し違うかもしれません。
ただ、いつもの装いの中に、ときどきこうしたものを取り入れてみる。
少し強いものや、普段なら選ばないものがひとつ加わることで、それまでとは違ったスタイルが生まれる。
ファッションには、それくらいの幅があっていいと思っています。
kotoが大切にしているものを変えるのではなく、その周りにある余白を少し広げてくれる。
SAMUEL ZELIGは、僕たちにとってそんな存在です。

DUFFLE — 26AW
今季kotoでセレクトしたのは、SAMUEL ZELIGの「DUFFLE」シリーズ。
着想源となったのは、軍や海軍で使われてきたダッフルバッグです。
長く使われてきたバッグには、破れた部分を直した跡や持ち主の名前、マーキング、落書きのような絵など、使った人それぞれの痕跡が残されています。
SAMUEL ZELIGは、そうした「使われる中で、少しずつ個人の物になっていった道具」に目を向けています。
そこから、海軍の伝統的なタトゥーを思わせるドローイングや、トランプ、ピンナップ、タバコといった当時の日常を想像させるモチーフを取り出し、オリジナルのアートワークとして服の上に再構成しています。
新品の服でありながら、どこか以前から存在していた物のように見える。
今回のDUFFLEシリーズには、SAMUEL ZELIGがヴィンテージと向き合う姿勢がよく表れているように感じます。

Duffle Chore Jacket
8ozのコットンヘリンボーンを使った、クラシックなチョアジャケット。
3本針による縫製やフロントの3つのパッチポケットなど、ワークウェアとしての素朴な構造をベースにしながら、DUFFLEのアートワークが全体に重ねられています。
さらにヴィンテージウォッシュを施すことで、刺繍だけが浮き上がるのではなく、ボディそのものにも長く使われてきたような表情が生まれています。
kotoではFaded BeigeとFaded Oliveの2色をセレクトしています。

Duffle Pant
同じく8ozのコットンヘリンボーンを使ったDuffle Pant。
股上を深く取り、ゆとりを持たせたシルエットの中に、DUFFLEのアートワークが点在します。
単体で見ても存在感がありますが、Chore Jacketと合わせると、ひとつひとつのモチーフが上下へと広がり、DUFFLEというテーマがより立体的に見えてきます。
こちらもFaded BeigeとFaded Oliveの2色をセレクトしています。

Duffle Crewneck
15ozのヘビーウェイトなコットンフレンチテリーを使ったクルーネックスウェット。
ラグランスリーブや前後の首元に入るV字のリブなど、古いスポーツウェアを思わせるディテールをベースにしています。
Tinted Oatmeal Greyの少しくすんだボディにDUFFLEのモチーフが点在し、同じアートワークでありながら、ジャケットとはまた違った見え方をつくっています。

Duffle Hoodie
Duffle Hoodieも、15ozのヘビーウェイトなコットンフレンチテリーを使用。
ヴィンテージのスポーツウェアを思わせるディテールをベースに、Olive Brownのボディへヴィンテージウォッシュを施し、その上にDUFFLEのアートワークが重なります。

同じテーマ、同じアートワークであっても、ジャケット、パンツ、クルーネック、フーディーとベースとなる服が変わることで、その見え方も少しずつ変わっていきます。
背景を知ってから改めて服を見ると、最初はひとつのグラフィックとして見えていたものの中に、それぞれの物語が見えてくる。
それも、SAMUEL ZELIGというブランドのおもしろさのひとつだと思います。
