oira — 素材と形、そのあいだにあるもの
生地に触れ、袖を通してみる。
見ていたときには少し不思議に感じた形が、身体の上では自然に収まる。素材の表情も、着ることでまた違って見えてくる。
今季のoiraには、そんなふうに、実際に身につけることで知っていきたくなる服が揃っています。

006 / I feel
今回のコレクションは「006 / I feel」。
デザイナー自身の原体験から、身体で感じることへ立ち返り、素材と衣服の関係を探っています。
布が肌に触れる感覚や、身体との間に生まれる空間。服を見るときには気づかなかったことが、袖を通すと少しずつ分かってくる。
今季のoiraを見るうえで、この「感じる」という言葉は、ひとつの入口になると思います。
WHY OIRA AT KOTO
kotoでは、ずっと「余白」を大切にしています。
ひとつのスタイルに収まりきらないものや、いつもの装いから少し離れたもの。その人なりの着方や解釈が入り込める場所を、店の中にも残しておきたいと思っています。
oiraをセレクトしたのも、その余白に加わることで、おもしろい反応が生まれるのではないかと感じたからです。
個人的な印象ですが、生地に強いこだわりを持つ服は、比較的オーセンティックな形でつくられることが多いように感じます。
oiraには、素材を深く掘り下げながら、形にも積極的に踏み込んでいく新鮮さがあります。
身体との距離の取り方や、布の重なり、少し意外な位置にあるディテール。素材へのこだわりが、ユニークなパターンワークへとつながっているところに惹かれました。
クワイエットラグジュアリーという言葉に象徴される、控えめな上質さに目が向くこともあります。その一方で、少し挑戦的なデザインに触れると、ファッションにはこういう楽しさもあったと改めて感じます。
普段なら選ばない形を着てみる。少し不思議なものを、自分の装いの中に迎えてみる。
「普通ではない」ということを受け入れられる感覚は、忘れずにいたい。
店の中にoiraがあることは、kotoが大切にしている余白を、ひとつの形として伝えることでもあると思っています。

V NECK PULL OVER — 肌に触れて分かること
今回、個人的に特に感動したのが、Super zeaを使ったニットの肌触りでした。
僕自身、ウールのちくちくする感覚が苦手です。ただ、このニットに触れたときには、その刺激を感じず、ウールに持っていた印象が変わりました。
Super zeaは、ニュージーランドのマウント・クック周辺で育つファインメリノの中から、平均16.5ミクロンクラスの細い繊維を選んだウールです。
カシミヤに匹敵する繊維の細さに加え、縮れの多い原料による柔らかさとふくらみが特徴です。
Vネックプルオーバーは、広めの身幅に、細めの袖と浅いVネックを組み合わせた形。長めのリブも、全体のバランスをつくっています。
ゆとりがありながら、ただ大きく見せるだけではない。その形と肌触りが、一着の中でつながっています。
いいものを身につけるということには、見た目だけでなく、身体にとって心地よいという実用的な良さも含まれている。
自分にとって本当にいいものなのかを、触れて、着て、確かめる。このニットは、その大切さを改めて感じさせてくれました。

KNIT PANTS — 同じ糸を、違う形で
ニットパンツにも、Vネックプルオーバーと同じSuper zeaを使用しています。
脇の縫い目を設けないストレートの形に、グレーの編み地とブラウンの後ろポケット。
上半身にまとうニットと、脚を包むニット。同じ糸でも、服の形や身体の動きが変われば、その感じ方も変わります。
シャツに合わせたり、ニットを重ねたり。普段のパンツをこの一本に替えることで、装いの中に違う素材の感覚を取り込めます。

BOX CARDIGAN — 赤と、糸のふくらみ
BOX CARDIGANには、ニュージーランド産とオーストラリア産のウールを組み合わせた「オーセンティコ」という糸を使用しています。
縮れの強い原料によるふくらみと弾力、光沢が、鮮やかな赤の表情を支えています。
広い身幅と肩の落ちる形に、前後のブラックのボタン。はっきりとした色と、ゆったりした輪郭が重なるカーディガンです。
いつものパンツやシャツに、この赤を加えてみる。
見慣れた組み合わせにも、ひとつ違うものが入ることで、新しい着方が見えてくるかもしれません。

KNIT JACKET — 編み地に添える革
ウールとリネンの編み地に、ブラウンの鹿革を添えたKNIT JACKET。
片側へ重なるフロントと、ゆとりのある形が特徴です。グレーの編み地に対して、ポケット口の革が小さな変化をつくっています。
ジャケットという名前から想像する着方にも、少し幅を持たせてくれる一着。
シャツの上に重ねても、カットソーに羽織っても、それぞれの着方で輪郭を楽しめます。

IF COAT — 布と革を重ねる
赤い身頃に、黄色い鹿革を配したIF COAT。
コットン、シルク、ウール、アセテートを組み合わせた表地に、超長綿の裏地を合わせています。
以前のリバーシブルコートから構成を変え、今回は片面の仕様へ。ポケット口と襟裏には鹿革を配しています。
布と革、赤と黄色。異なる素材と色が、一着の中で隣り合うコートです。
襟を動かしたり、袖口の紐を絞ったりすることで、着る人もその形に関わることができます。

ZUKIN HALF COAT — 布の表情と、大きなフード
ZUKIN HALF COATには、蝋引き加工を施したリモンタのヘンプコットンを使用しています。
リモンタは、1893年に始まったイタリアのテキスタイルメーカー。織物づくりに加え、生地の仕上げやコーティングの技術を発展させてきました。
原料だけでなく、織った後の加工も布の表情をつくる一部です。
このコートでは、そうした生地に、大きなフードと肩の落ちる形を重ねています。
顔まわりを包む輪郭や、身体との間に生まれる空間。生地を平らな状態で見るだけでは分からない部分まで、着ることで感じられる一着です。

素材にこだわることと、形を自由に考えること。
今季のoiraを見ていると、その二つが自然につながっているように感じます。
肌に触れたときの心地よさも、少し意外な形を着る楽しさも、自分にとっての「いいもの」を見つける手がかりになる。
kotoの余白の中で、そんな出会いを楽しんでいただけたらと思います。
